- 美馬寛子(みま・ひろこ)さん
難病を乗り越えて美しく輝き続けるために
すこやかに美しく。難病を乗り越えたミューズに聞く 2008ミス・ユニバース日本代表美馬寛子さんからのメッセージ
美馬寛子(みま・ひろこ)さんプロフィール
1986年、徳島県生まれ。2009年、日本大学文理学部体育学科卒業。3歳ごろから「ちびっ子娯茶平」で阿波踊りを踊る。中学1年の時に、年間発症率が10万人に2〜3人といわれる難病のひとつギラン・バレー症候群を発症。右手と右脚が麻痺し、入院と自宅療養の末に克服。リハビリに勧められた陸上競技(走り高跳び)で才覚を発揮し、全国大会に計7回出場する。その後、父親の急な他界を経験して「人生は一度きりしかない」と思うようになり、ミス・ユニバースのニュースを目にして応募する。2008年4月に4000人の応募者の中から日本代表に選ばれ、同年7月にベトナムで開かれた世界大会でTOP15(ファイナリスト・入賞)を果たす。現在はモデルやタレントして活躍する一方、美しく輝くひけつなどの講演を行っている。
「普通は当たり前ではない人生は一度きり、だからチャレンジ」
難病がきっかけで考えた普通ってなんなんだろう?
ギラン・バレー症候群という、女優の大原麗子さん(故人)も患った難病のひとつに、私も13歳のときにかかりました。発症の原因は明らかにされていないんですが、風邪と同じようなウイルスが脊髄に入って運動神経などに害を及ぼすという病気です。
中学1年だった私はある日風邪をひいて、微熱だったので家で休養していたんですが夜中に倒れてしまいました。意識はあったんですが、右手が麻痺してグローブをはめているような感覚で握力があんまり無い。右脚は感覚がまったく無く、さわっても分からないし、針で刺しても痛みが感じられなくて、若いのに脳梗塞か?とすぐに病院に行きました。小児科で診てもらい、いろんな検査を受け、最終的に脊髄を検査してギラン・バレー症候群だということが分かりました。年間10万人に2〜3人がかかる病気という説明で、治療法は様子を見ないと分からないと。ひどい場合は全身に麻痺が回り、車椅子や寝たきりの生活になる場合もあるということでした。
私の症状は、右手の握力がほとんどなくてお箸もスプーンも持てず、歩くのも右脚の感覚がないため歩行器を用意されて、入院して様子を見ることになりました。入院した頃がいちばん症状が悪い状態だったんですが、1カ月ほどするとだんだん麻痺が治っていき退院することに。その後さらに1カ月半ほど自宅療養をして、それから学校生活に戻ることが出来ました。
この病気にかかって強く感じたことは、「普通って一体なんなんだろう」ということです。昨日までできていたことが今日できなくなる。昨日まで普通にお箸を持って食べていたご飯、スプーンを持って飲んでいたスープ、それらができなくなってしまう。歩くのも歩行器が必要。私は運動が大好きでスポーツもずっとしてきたんですが、それも出来なくなる。本当に少しのことで、これまで普通だったことがそうじゃなくなる。普通ってなんなんだろう?って、この時から考えるようになったんですね。
父の急な他界で考えた人生ミス・ユニバースへの応募
大学1年生の時、いつも一緒にいてくれた父が他界しました。難病も経験した後、父が急に他界して、そのことから本当に、人生ってなんなんだろ、明日ってなんなんだろって考えることが多くなりました。
東京の大学に行かせてもらっていたので東京だからできることは何かを考えるようになり、2007年に、たまたまテレビでミス・ユニバース・ジャパンが世界1位になったというニュースを目にして、この大会に興味が湧き調べてみました。
外見の美を競うミスコンの中でも、この大会だけは内面の美を重視していて、「ミス日本」ていうとお嬢様って感じだけど、こちらはやんちゃな私でも大丈夫かなと。ネットで応募資格を調べると、未婚で、日本のパスポートを持っている27歳までの女性なら応募資格があることが分かりました。ま、受かるはずもないだろうし、応募して損することはないからと。
ずっと陸上ばかりやっていたのでメイクをしたことがなく、メイク道具も持ってなく、ヒールを履いたこともなかったけど、頑張って準備して学校で友達に写真を撮ってもらい応募したんです。応募者数は4000人だったと後で知りました。
ある日、電話がかかってきて、1次予選に通過したから2次予選に来てくださいと連絡がありました。行ってみたら集まっていたのはモデルさんか、そんな感じの方ばかり。そこに、ディレクターで先生役をしているフランス人女性のイネス・リグロンが登場して、ウォーキングの審査がありました。私はウォーキングなんてしたことないし、ここにいるだけで恥ずかしいと思うぐらい周りの方々がきれいだったので、早くこの場が終わってほしいとそればかり考えていました。
そして、私はなぜか合格し、訳のわからないままこの世界に入っていきました。
健康美を伝えていきたい自分は必ずできる
ミス・ユニバース・ジャパンのファイナリスト10人の中に選ばれた私は、最終選考会までに3カ月間のトレーニングをしました。ウォーキングとモデル体型にすること、それと英語が私の課題でした。その間、自分は日本1位になることに本当にふさわしいのかと悩んだこともありました。英語も話せない、体型もモデルさんみたいじゃない。でも、他の人と違うところは、自分はモデル経験がまったく無く、初めてこの世界に入ったということ。イチから学ばないとダメだけれど、むしろそれをプラスにしなきゃいけない。何もできなかった子ができるようになった時のほうが、うぉーって強くアピールできます。
それに、この大会は内面の美を問われるのであって、モデルの大会ではないこと。もっと健康美というものを世の中の女性に伝えていけるんじゃないかなと思いついた時に、どんどんどんどん自信が出てきたんですね。自分が日本一になったら、こういうことが女性に伝えていけるんじゃないかと。
そして10人から5人に絞られる時、5人の中に私は残るだろうなと思ってました。というのは、自分が日本一になって世界大会に行くとマインドコントロールのように思い続けないと夢はかなわないので。無理だろって誰に言われても、いや、そうじゃない、自分はなるんだと強く思っていました。こうして、ついに最後の1人の日本代表になることができました。
「外見の美を磨くだけでなく、いろんなことに興味関心を抱くこと」
個性を自信にかえて興味の追求が美しさにつながる
4000人の中から最後の1人に選ばれた時は、その喜びよりも日本代表として世界大会に行かなきゃいけないプレッシャーがずっと大きくのしかかってきました。先生であるイネスからは「あなた、なぜもっと頑張らないの」と言われ、自分では頑張っているつもりでも先生にはそうは見て貰えなかった。日本女性の代表として世界大会に行くことを、もっと自覚してトレーニングをやっていきなさいと。また、自分の良さや個性的なところをもっと分からないといけないと言われました。
世界大会はベトナムであったんですが、準備期間があまりなかったので、ダイエット、ウォーキングの練習、英語スピーチの練習などで毎日大忙し。とにかく時間がなかったので、衣装合わせをしながらポージングや姿勢の練習、メイクやヘアデザインの練習も同時に行うほどでしたね。1カ月も続く世界大会のために、持って行ったスーツケースは6個にもなりました。ベトナムでは北から南へと移動して、その間に子供の保護施設や盲学校、ろう学校を訪問するなどの活動も行いました。
80カ国の代表の女の子が集まって来てたんですが、ひとつ恥ずかしかったことがあって、みんなでご飯を食べようと集まった時、最初に話すのが、あなたの国の政治はなに? 宗教はなに?あなたの宗教はなに? と、そういう話をみんながするんです。これまで日本で女子会とか女の子の集まりで、政治や宗教の話はまったくしたことないなと思って。各国代表で来ている人たちはやはり自分の国にとても誇りを持っているし、また他の国の人たちの政治や宗教などを知ろうとする。その人自身のことを知ろうとする。自分はこれまでそういうことはしてこなかったので、これはもっと勉強しないといけないなと思いました。
やはり本当の美しさって、外見の美を磨くだけじゃなく、知的なことや、いろんなことに興味関心を抱くこと。「輝き続ける美しさ」というのは、美に関することだけじゃなく、何かに興味を持って追求していくことが、たぶんその人の輝きにつながり、その輝きが美しさにつながっていくのではないのかなと思います。何かを追求し続けていくと、その頑張っている姿が周りの人たちにも見て分かる、何かを感じとってくれるはず。それが輝き続けるこつで、美しさに変わっていくのだと私は思います。
1. 食事では添加物をとらない
「いろんなダイエットを試して気付いたんですが、人間も動物だから、野生の動物がしているような食事をすれば太らないだろうと。まず添加物を取らないように気をつけました」
「人それぞれ合うダイエットや食べ物は違いますが、私の場合は、砂糖とお肉は一切やめました。スイーツは砂糖を蜂蜜に替えたりして作って食べます。肉は食べませんが魚は大好きで、徳島に帰ってくると必ずお刺身を食べに行きます。天然の鯛とワカメが大好きなので。2年くらい経ちますが10キロほど痩せました。」
2.ストレスや悩みは持ち越さない
「ストレスや悩みはできるだけ次の日に持ち越さないように心がけています。問題が残るとよく眠れなかったり、もっと考えこんでしまうので」
「ストレス解消法は、私は海外ドラマが好きなので、そういうのを見て現実逃避します。英語の勉強にもなるし。解決方法にはならないけれど、気分転換を図ればまた新たな方法が思い浮かんだりすることもあるので」
3.姿勢よく胸を張って歩く
「東京の通勤風景を見ると分かりますが、みんな同じようなスーツを着て、下を見て前に歩いて行きますが、ほんとアリみたいなんですよ。そうならないように、もうちょっと胸を張って、目線を上げて姿勢よく堂々と、男性は2本ラインの上を、女性は1本ラインの上を、まっすぐつま先を出して、きれいに歩いてください」