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今月のインタビュー【バックナンバー】

お話をお伺いしたのは…

(写真左から)

岩城クリニック
亀山和人 院長
日本糖尿病学会専門医
岩城クリニック
兼田康宏 理事長
日本精神神経学会精神科専門医
日本老年精神医学会専門医

糖尿病と認知症

身体・精神、双方向のケアが必要な訳
高齢「化」を通り越して、もはや「超高齢社会」となった現代。 複数の疾患を抱える人は多く、合併症へのアプローチは、いま大きな課題です。中でも県民病といわれる「糖尿病」は、合併症に注意が必要な疾患の代表格。実は、内科領域である「糖尿病」と精神科領域の「認知症」が、無視できない相関関係にあることをご存じでしょうか。

 

疾患が作用しあう

 

兼田
認知症には大きく分けて「アルツハイマー型」「レビー小体型」脳血管性」「前頭側頭型」があり、日本で一番多いのはアルツハイマー型認知症です。以前は生活習慣病との関連についてあまり注目されていませんでしたが、調査が進むにつれて、糖尿病や高血圧が認知症の大きな危険因子になるとわかってきました。

血圧が高いと脳卒中を誘発して、脳血管性認知症につながる恐れがあります。また脳の神経細胞等が破壊されてしまうと、アルツハイマー型認知症に進むことが考えられます。糖尿病の場合も、進行すると脳に障害をきたして、そこからアルツハイマー型認知症になっていくと言われているのです。また認知症の症状として「もの忘れ」が出てくると、薬の飲み忘れがおこって血糖・血圧のコントロールに支障をきたします。まさに悪循環です。

 

亀山
徳島県は糖尿病の罹患率も死亡率も全国トップクラスです。高齢県なので、糖尿病が原因で結果的に亡くなってしまう人が多くいます。平均寿命が延びたことで、多くの患者さんが糖尿病や認知症を抱えるようになり、併発しやすい状況です。脳の栄養になるのは「ブドウ糖」と呼ばれる「糖」。す。血管や脳の老化を進めるのもまた、ブドウ糖という考えがありまるブドウ糖は酸化物質の代表と言われていて、血管を酸化して老化させます。脳自体も酸化させる上、脳の中に糖分がたまると脳の老化も進んでいきます。つまり、糖尿病は「老化が早く進む病気」なのです。そういう面では認知症も進行しやすいと言えます。実は1型糖尿病(小児糖尿病とも呼ばれる)の患者さんが大人になって、仕事や育児などのストレスにさらされると、血糖のコントロールがきかなくなります。そうすると、ものすごく物覚えが悪くなってくるのです。これは認知症とは違いますが。血糖が脳の働きに大きく作用する一つの例です。脳の働きと血糖コントロールには大きな相関関係があるのです。

 

 

複合的なケアの必要性

亀山
糖尿病学会で「認知症との関連」がテーマとして捉えられるようになったのは、ここ2〜3年のことです。さまざまな調査・研究から、単に血糖を下げればいいということではなく、「認知症」についても適切に対応すべきだと考えられるようになりました。
兼田 精神科領域では、日常的な診察で身体を診ることは多くはないのですが、認知症の人を診る上では血糖値や血圧はきちんとチェックしないといけません。「もの忘れがひどい」と認知症の検査に来た方の採血をすると、血糖値が高い、あるいは血圧が高いことはよくあります。当院では身体・精神の双方向からアプローチすることの重要性を啓発しています。

 

 

 

専門医が常勤することの強み

亀山
糖尿病の患者さんの中で認知症を疑う人が出てきたとしても、精神科の医師である兼田理事長が常勤していますから、すぐに診てもらえます。患者さんにとって負担が少なく、治療する側にとっても情報共有が楽にできるので助かっています。
兼田 外来・入院の患者さんを問わず、何かあればすぐに連絡が入ります。身体と心の両方を診るという体制は、非常に理にかなっていると思います。

 

 

 

チームで診る

兼田 自発的に認知症の検査に来る人は少数派です。ご家族が「以前と比べて何か違う」と感じたら、念のために受診するのが良いでしょう。当院は内科・整形外科・リハビリテーション科もあり、健診施設も併設しています。体の検査に加えて、自然な流れで認知機能の検査もできます。

亀山 医師同士はもちろん、看護師、作業療法士、理学療法士すべてが入院・通院患者さんを見守っています。それぞれがプロの立場で患者さんに接することで、小さな変化にすぐに気付いて情報を共有します。
兼田 認知症は確実に進行しますから、いかに早く発見・治療し、進行を遅らせるかにかかっています。スタッフの連携が、早期発見や病気予防に貢献しているのです。

 

 

 

体の健康、心の健康

兼田 
体を健康にすることは、うつや認知症に大きな影響を与えます。足腰が弱れば脳機能が落ちます。同時に脳機能が落ちれば足腰も弱ります。これは「脳への刺激」が少なくなるからです。
認知症や各疾患に対応するために、関連施設として「グループホーム 無量寿」「看護小規模多機能型居宅介護 じゅげむ」「訪問看護ステーション ナイチンゲール」を開設しました。

亀山
糖尿病も認知症も「食」による影響があります。当院や関連施設の食事は、管理栄養士指導のもと、地産池消・無添加にこだわっています。野菜が多くてヘルシーな内容で、医師の私も驚くほどです。

 

兼田
医師である私たちと病院スタッフ、関連施設が連携し、認知症と糖尿病の両方をしっかりと診ていきたいと思います。