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かじかわ整形外科
理事長
梶川智正先生
熱中症
■熱中症の発生原因は?
・気温が高い、湿度が高い、風が弱い・輻射熱(放射熱)の上昇・運動による体内での熱産生・加齢などによる体の放熱能の低下・体調不良(脱水・発熱)・心機能・腎機能の低下・既往症(脳血管障害、精神障害、パーキンソン病など)・暑い環境に対し、体が順応(慣れ)していない・通気性や吸湿性が悪い服装などが挙げられます。
■かかりやすいケース
発熱や下痢などで体調が悪い場合や、心肺機能や腎機能が弱い、糖尿病や認知症といった、何らかの基礎疾患がある場合は熱中症にかかりやすくなります。新生児や乳幼児は大人と比較して体内の水分の割合が80%~65%と成人の60%より高く、体表面積も少ないことにより、ちょっとした脱水でも熱中症にかかりやすく、自分で症状をうまく伝えられないため、こまめな注意が必要となります。
熱中症が起きやすい時間帯は、気温が上昇する午前11時前後と、最高気温の時間帯は過ぎているものの仕事の疲れが出やすい午後3時前後にピークがあります。
脱水のチェック
《見る》
・体温がいつもより2度違う ・血圧の低下
・脈拍が1分間に30以上増加
《さわる》
・わきの下が乾いているのは脱水の兆候
・爪を押さえて離して、2秒以内に赤みが戻らない
・腕の皮膚をつまみ上げて離すとしわのままになっている
■高齢者は特に注意!?
最近では、高齢者の方が室内で熱中症にかかるケースが多くなっています。理由として…・エアコンがあっても効き過ぎるのを嫌って使わない・防犯のために窓を閉める・夜間、トイレのために起きないように水分摂取を控えるなどが考えられます。
■手当の基本
めまいや立ちくらみ、筋肉のこむらがえり、汗を拭いても拭いても出てくるといった軽症例では、まずは涼しい場所に移動させて体を冷やすことが大切です。保冷剤や氷嚢があれば、脇の下や太ももの付け根、頸部といった動静脈が通る場所にあてましょう。なければ、タオルやうちわで扇ぐだけでも効果がありますが、体表面を霧吹きなどで濡らすとなお良いでしょう。それに続き、水分やナトリウム、糖分を、スポーツ飲料や最近流行の経口補水液(ORS)で補給しましょう。
頭ががんがんする(頭痛)、吐き気がする、嘔吐する、体がだるい(倦怠感、虚脱感)といった中等症例では、原則として軽症例の対応に加えて必ず誰かが付き添うように。症状が改善しなければすぐに救急車を呼んだり、かかりつけ医や救急病院に連絡しましょう。
意識がない、体ひきつけをおこす、呼びかけに返事をしない(もしくは返事がおかしい)、まっすぐ歩けない、走れない、高体温である…といった重症例では、軽症・中等症例の対応をしながら救急車で病院に運びましょう。
熱中症予防の8か条
1 知って防ごう熱中症 2 暑いとき、無理な運動は事故のもと 3 急な暑さは要注意
4失った水と塩分取り戻そう 5体重で知ろう健康の汗と量 6 薄着ファッションで爽やかに
7体調不良は事故のもと 8あわてるな、されどいそごう救急処置
■経口補水液とは?
世界的に、小児の嘔吐や下痢などによる脱水に対して、軽症で飲水可能であればナトリウムやカリウムといった電解質や糖分を含む経口補水液が推奨されています。小児のみならず高齢者やスポーツ選手にも普及しており、自分で作ることもできます(詳細は下囲みを参照)。
■何科で診てもらう?
「どんな症状?(重症度)」「いつ(時間帯)」「どこで(場所)」によって異なります。原則、軽症例ではかかりつけ医に連絡して指示を仰ぐのも良いでしょうし、場所や時間帯によっては近くの救急病院や夜間診療に連絡しても良いでしょう。
中等症例では、軽症例と同じ対応で結構ですが、症状が改善しない場合は救急車を呼び、救急病院で搬送しましょう。
重症例は、場所や時間帯を問わずすぐに救急車を呼び、しかるべき救急病院へ搬送してもらいましょう。
■予防するには?
急な暑さに気をつける、暑い時や体調が良くない時はむりな運動や労働はしない、汗をかいて失った水分や塩分、糖分をこまめに補給する、薄着で爽やかに。帽子や日傘も効果的です。「お粥に梅干し」も熱中症予防の理にかなっています。水分が多く、米に糖分が含まれ、梅干し1個の塩分は点滴1本分(500ml)と同じ。スポーツをするときに持っていくのが理想ですが、お粥はさすがに難しいでしょうから、梅干し入りのおにぎりを持っていくのがオススメです。
服装は吸水性に優れた白色系の素材が良く、なるべく襟元を緩めて通気をしましょう。水分と塩分の補給には経口補水液を利用しましょう。
かんたんな経口補水液の作り方
水1リットルに、砂糖40g(上白糖 大さじ4と1/2杯)と塩3g(小さじ1/2杯)を混ぜる。
*水1リットルの代わりに、水700mlと無塩トマトジュース300mlでもおいしい。
*スポーツ飲料に塩を少し足してもいい。
*経口補水液はドラッグストアなどでも市販されている。
*風邪をひいて熱がある時の水分補給にもいい。
[摂取量の目安]
学童~成人 500~1000ml/日
幼児 300~600ml/日
乳児 体重1kg当たり 30~50ml/日
■今年は熱中症が増える危険が!?
人口10万人あたりの救急搬送人数は、徳島は四国4県の中でももっとも低い37.04人。とはいっても油断は禁物! 東日本大震災の影響で節電への意識が高まるに伴い、エアコンの使い控えなどによる熱中症の増加も懸念されています。そのため今年から、気温が35℃を超える日は気象庁から“高温注意報”が発令されることに。お盆前後の稲刈りなど高温多湿の中で行う農作業や庭仕事、運動や遊びは外でも室内でも、高齢者は室内にいても水分を補給して、熱中症に注意しましょう。1人でいない、1人にしない。