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今月のインタビュー【バックナンバー】

お話をお伺いしたのは…

徳島大学病院
食道・乳腺甲状腺外科長
丹黒 章先生

乳がん

乳がんは
人類が初めて遭遇した“がん”と言われており、乳管から発生し、この管の中にとどまっていれば他に転移することはなく、その部分を切り取るだけで完治する病気です。他のがんとは違い成長も遅く、ホルモン療法や抗がん剤にもよく反応するために、小さいうちに治療を行えば90%以上は完治させることができるのです。しかし現在、世界的にも乳がんは増えており、日本では毎年5万人以上の人が乳がんにかかり、1万人以上の人が亡くなっています。徳島県でも毎年400人以上の人がかかっています。

■乳がんの症状は?

 ほとんどは“しこり”で発見されます。「堅いしこりがある」、「乳腺に変形がある」、「くぼみができた」などの症状があれば乳がんが疑われますので、病院で相談してください。乳頭から分泌物が出る、ひび割れて出血するなども症状のひとつです。他にも下記(図)のような症状もあり、近年は無症状の乳がんも増えているので、定期的な検診やチェックが必要です。乳がんは、痛みを伴うことはほとんどありません。しこりがあってそこが痛い場合は良性の乳腺症という疾患が多いのですが、がんとの鑑別が必要です。

乳がんの初発症状

■乳がんに、なりやすい人は?

 日本人の乳がんの特徴は罹患のピークが40歳代にあり、働き盛り、子育て真っ最中の女性が一番かかりやすく、現在死亡率も一番高くなっています。早期発見や、適正な治療のおかげで年々死亡率の減少している欧米と違って、死亡率が増えていることが日本の問題です。また遺伝性の乳がんも増えていますので、身内に乳がんになった人がいる場合は、定期的に検診をしましょう。

■どこを受診すればいい?

 乳がんを扱っているのは外科ですが、外科に抵抗があれば産婦人科に行ってください。徳島県では乳がん検診を行っている産婦人科の先生がたくさんいますので、診断をつけて専門医に紹介していただけます。乳がん専門医は少ないので受診しやすい病院で検診を受けてください。乳がんを専門で診ている病院もあります。

■自分で発見できる

 入浴時に鏡を見て、乳房に変形や左右差がないか確認しましょう。石鹸をつけて4本の指の腹で反対側の乳房を外から内に撫でて触れるものがないか確かめてください。指の腹にひっかかるコリッとした感触やゴツッとした堅いものが触れば専門医を受診しましょう。

■専門病院での検査と初期治療

 乳がんの診断は超音波検査とマンモグラフィが使われます。これらの検査で乳がんが比較的容易に診断できます。乳がんのほとんどは手術を行いますが、最近は乳房温存療法で手術を行うことができます。従来は腋窩(ワキの下のリンパ節)のリンパ節をすべて切りとる郭清術が行われていましたが、初期のものはがんが一番最初に転移する“センチネルリンパ節”を切り取り、検査・診断して転移がなければ郭清を省略できますので術後の腕のむくみや知覚障害がほとんどなくなりました。乳がんは、発見が早ければほぼ治る病気であり、逆に発見が遅ければ死につながりやすいがんです。唯一自分で発見できるがんでもありますので、セルフチェックを行い、定期的に検診を受けましょう。

■定期検診を

 乳がん検診は40歳以上の方は、2年に一度受診することをおすすめします。血のつながりのある方で3人以上が乳がんや卵巣がんにかかった人がいる場合や、若くして(35歳以下)乳がんにかかったり、両側に乳がんができた人が身内に2人以上いれば20代でも検診を受けることをおすすめします。また、乳がんは、女性だけの病気ではありません。頻度は少ないですが男性もかかる病気です。しこりがあると感じたら早めに病院を受診しましょう。
 乳がんは、早期発見をすれば助かるがんです。徳島県では、検診の技術が優れており、他の県に比べ早期発見される乳がんが多いとされています。2006年に成立した[がん対策基本法]では50%の人が検診を受ければ、がんで亡くなる人を半分に減らせると謳っていますが、日本では費用の援助が少ないために検診受診率は25%程度です。無料で検診が受けられ、80%の人が検診を受診しているイギリスのように死亡率を減らすまでには至っていません。
 市町村や各団体の取り組みにより、検診料の一部負担などをしてもらえたり、5年おきに配られる健診無料クーポン券ありますので確認してみてください。