- 岩城クリニック 兼田康宏院長
はじめよう心のメンテ
心の病気には、実は数多くの症状がある。
もしかしたら意外な症状が病気だと教えてくれる…かも。
■心の病気は現代病!?
今回は『岩城クリニック』の兼田院長に話を聞いた。「患者さんの数が昨今で特に増えたという印象はありません。当院の心療内科には1年間で248名の新規来院患者がいます。日本の総人口の1割ほどはうつ病患者がいると言われていますが、実際に病院で診療を受けている方はその数には程遠いんです」。表面化していないうつの状態、すなわち心の病に苦しんでいる人は数多く存在している可能性があり、それほど現代社会に関係した病気であるのだ。
■心の異変
心が悲鳴を上げるとき、どんな心の病気にかかっているのだろう。「実は、症状の出方は決まっているんです」と兼田院長。原因が多様化しているうつ病であっても、症状が心・気持ちに出る場合と体に出る場合の二つがある。だから・今までの自分と違う・という違和感や、心療内科以外での受診時にかかりつけ医から「異常なし」と診断されるなど原因のわからない不調に悩まされた場合には、一度心療内科を受診してみることをおすすめする。
■え、この症状も心のチェックリスト
先に述べた症状は実際にどういった形で現れるのか、心の症状をチェックリストとして掲載。意外な症状も含まれるので、当てはまるものがないかチェックしてみよう。
■心の病気の種類
心の病気は、うつ病以外にも多数存在する。ストレス関連の病気は大きく分けて神経症性障害(神経症)と身体表現性障害(心身症)の2種類がある。ここではさらに細分化し、病気と症状を合わせて紹介する。
1 神経症性障害
●全般性不安障害
漠然とした不安が続く。たとえば「息子のことが心配で、気になって気になって仕方がない」など。
●パニック障害
激しい息苦しさを生じる、パニック発作。過呼吸に近い症状。
●強迫障害
わかっているのにやめられず、何度も同じ行動を繰り返す。たとえば潔癖で何度も手を洗うなど。
●解離性転換性障害
本来であればその行動ができるはずなのに、ストレスにより急に機能が麻痺する。声が出なくなる・失声・や歩けなくなる・失歩・が有名な例。
2 身体表現性障害
薬を飲んでも治らない胃潰瘍・心因性高血圧・喘息発作など。
これらの症状はストレスが原因で精神や身体症状を引き起こしている。「まずはストレスに気付くことです。次に、ストレスを上手にかわしましょう」と兼田院長は話す。
■もしかしたら心の病気かも…
そんなときは自分で抱え込まずに医師に相談してください。
自分がうつ病かも…と思ったらかかりつけの先生か、専門医に相談してください。また、身近な人にうつ病の症状が見られたら、遠ざけずに直接本人に話を聞く。もしくは第三者に相談をしてください。本人がうつ病だと認めることが大切なんです。受診のときはご本人だけではなく、ご家族も一緒のほうがいい。ご家族のサポートが必要なんです。過干渉、無関心は、症状を悪化させることもあります。普通に接してあげるのが一番。そんなお話もさせていただきますので、ご家族も一緒に病院へ足を運んでください。病気ではないという方も、普段からストレスを溜めない工夫を心がけてください。毎日仕事だけするというのではなく、休養とレクリエーションを取り入れてみてください。具体的にいうとヨガやスイミングといった運動・リラクゼーション・社外の人との交流などがいいでしょう。無理して外出する必要はありません。家の中にいても楽しめることがあればいいんです。面倒くさくなくて、かまえずできることをしてみてくださいね。お笑いもオススメですよ! 私はお笑いを見るのが大好きなんです(笑)。
岩城クリニック 兼田康宏院長
■治療期間と治療方法
「うつ病の場合は良くなるまで2~3ヵ月。その継続期間に半年、維持期間にさらに半年くらいは見てください。治ったと思ってすぐに治療をやめると再発してしまいます。治療には休養と薬物療法の2種類を取り入れています」。休職期間としては3ヵ月くらいで、徐々に完治を目指す。
■通院と入院
心の病気全般として、基本的には通院による治療を行う。しかし兼田院長は「・死にたい・などの願望や、家にいると治療ができない場合は入院したほうがよいですね」と話す。
■心療内科に精神科…神経内科の違いって?
混同されやすいが、この3つの診療科目はそれぞれ異なっている。心療内科のある病院には精神科がある場合が多く、精神科で受診する病気の中でも症状の軽いものは心療内科での受診が可能だ。重度の統合失調症や認知症の場合は精神科にかかる必要がある。神経内科では、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)など神経系の病気の診療を受けられる。
■保険の適用
心の病気治療では外来・入院ともに保険が適用される。また、外来診療では自立支援医療も適用になるので、その場合は自己負担が1割となる。
これが・心の病気・という、明確な印はない。だからこそ、見逃され放置されてしまうのだ。本人が、周りが、そのちょっとした異変に気づくこと、それが治療の第一歩なのである。思い過ごしと思わずに、気軽に心療内科へ足を運んでみよう。